FIFA W-cup Qatar 2022 観戦記

Dohaの悲劇(1993年10月W-Cupへ出場出来ず)から
Dohaの歓喜(2022年12月予選リーグ突破)へ

第73期 山田 朗

Qatar Dohaへ

ブラジル大会、ロシア大会に続き、ちょんまげ隊の一員として現地でのボランティア活動のサポートを行う。11月22日早朝にABU-DABI経由でQATAR DOHA入りをした。

さて、ロシア大会から4年半、過ぎてみると早かった。カタールと聞いて先ず私が思い出すのは、1979年のイラン革命だ。
当時私はイランのドイツ、シーメンス原子力発電所の先行立上げ(海水淡水化)現場にスーパーバイザーとして日本人20人位と共に居た。いよいよ、日本チームが引き揚げようとしていた矢先、イラン革命が本格化し、ホメイニ師がフランスからイランに戻る段になり、空港が閉鎖され帰国出来なくなった。確か2月から3月の2週間経っても旅客機が飛ばずに留まらざるを得なかった。日本チームプロジェクトマネジャーから、船をチャーターしカタールに逃げようと言う案を聞いて、カタールって何処??(右マップの赤印がイラン原発Bushehr地域) 原発現場からペルシャ湾の対岸の真南にカタールは位置していた。
40数年経ってそのカタールに来るとは!
その後、ドイツからルフトハンザ航空が救援に来る事となり、ドイツ人、日本人全員ドイツのフランクフルトに逃げる事が出来、そこで解散となった。不幸中の幸いでヨーロッパを短時間だが廻ることが出来た。
未だテレックスの時代、1ドル220円? ヨーロッパ、エコノミー往復70万円の時代だった。現場に持って行ったカセットテープの中には中島みゆきの「時代」があり、毎日の様に聴いていた。

Dohaの街
イラン ブーシェフル原子力発電所カタール空港にて

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ともにカタールへ!

 今回、ちょんまげ隊による募金だけで日本の被災地5ヶ所から生徒たち8人を連れて行くProject、「ともにカタールへ」通称トモカタに積極的に参加した。

8年前のブラジル大会で偶然ちょんまげ隊に出会い、サッカーで出来る被災地支援のポリシーに賛同、ブラジル大会では東北震災で帰宅困難な生徒4人、ロシア大会では3人の生徒を連れて行く事が出来た。今回は被災地の範囲を広げ熊本球磨村、愛媛宇和島、岡山真備町、福島南相馬、宮城女川町の5ヶ所から(被災地マップ)8人を連れて行く事が出来た。

W-cupでは毎回約300万人が世界中から集まる。そこで得られる人々との交流は子供達に取って最高の体験となる。又、ネット社会の今はスマホで簡単に地元の支援者と繋がり、リアルタイムでやり取り出来る。11月22日のカタール大学生との交流会では、生徒達による日本の被災地の現状報告と共にカタールからの支援に対する感謝を伝えた。

私も今年になって初めて知った事には、東北震災の後にカタールから水産加工所や倉庫など数ヶ所の建物を寄贈して頂いていた。カタール大学生からは日本文化を勉強している事から彼等の思いなどを共有出来た(この様子はNHKでニュースになった)。
今回このような若い世代とカタールが繋がり、良い関係を継承して行き、一歩一歩国際社会の中での立場が上がる事を期待する。

ともにカタールへ!
被災地マップカタール大学生との交流会

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日本戦3試合を応援する その1

日本の予選リーグはEグループ、ドイツ、コスタリカ、スペインと抽選時は「死のグループ」と言われた。しかし私は、今の選手の殆どはヨーロッパで活躍しているから、少なくとも互角の戦いが出来るはずと踏んでいた。

♦日本の初戦はドイツ戦(11月23日)Khalifa International Stadium
ちょんまげ隊は試合前の5時間前からスタジアム入りし、各国サポーターとエール交換しながら開始を待つ。皆さん甲冑や被り物を持って入るので、セキュリティチェックで必ずひと悶着ある。私が友人知人にトモカタ募金を募った際、応援コメントを書いてもらった日本国旗も、一カ所「日本頑張れFight、Fight」と書いてあったため、いったん没収された。それは「Fight」という言葉は戦闘を意味するから、誰かに対するサインではないかと勘繰られ、日本語のファイトは「keep it up 頑張れ」という意味だからと説明して、戻してもらった。
さて、スタジアム敷地内に入ってからがちょんまげ隊の本領発揮、用意してきた日本ハチマキを応援してくれる方々へ配る、大日本国旗にエールを書いてもらう、一緒に写真を撮って仲間になってもらう、などいくら時間があっても足りない。
対戦国のサポーターはいつも相当派手な格好をしてくる者が多いが、ドイツサポーターは地味、何となく一般市民の感じがして違和感あって、可笑しいなと感じヨーロッパ在住の方に聴いたら、ドイツでは人権問題でカタール大会をボイコットせよとの世論が多く、ニュースで試合は流れず、開催されているのも知らない人が居るようだと。来ている人は、単なる観光客か在住の方の様でした。
試合は誰もがドイツには勝てるとは思わなかったが、何と逆転勝ちした。

♦第2戦、コスタリカ戦(11月27日)Ahmad Bin Ali Stadium
予選リーグのEグループとなった時は、ドイツに引き分けてコスタリカに勝って、最後スペイン戦では何とか引き分ければ、予選リーグ突破の可能性が見えてくると誰もが思っていた。ドイツに図らずとも勝利し、コスタリカに勝って決勝リーグだと思っていたが、
どうも相性が悪いようで負けてしまった。

ちょんまげ隊長と
ちょんまげ隊、本領発揮!じゃんけんマンと

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日本戦3試合を応援 その2

♦第3戦 スペイン戦(12月1日)Khalifa International Stadium
1勝1負で迎えた運命のスペイン戦、せめて引き分けて欲しいと臨んだ。
そして世界を驚かせた「三苫の1ミリ」で勝利!

現代のIT技術!ボールに仕込まれているICチップのお陰で、VRの結果オンラインと判定され、ゴールが認められた。英国のコメンテーターは、ラインを割っているとは言えない、という表現。

予選スペイン戦に勝って、余韻覚めやらずの翌朝、日本へ帰国の途に就いた。
空港に向かうタクシー運転手(パキスタン系)が自分は親族が日本で働いていると。昨夜のスペイン戦の話しになり、あの小さいが早いヤツは誰だ?Maeda Daizen!!、普通なら三苫とくるところ、毎試合日本を応援してくれてるようで、良く見ているなと関心。
(前田の足は10センチ届かず、三苫は20センチ長かった)
毎日ほぼ快晴のカタールを後に帰路に付いた🎵Uber taxi 15qrだったが気分良く「20qr keep change!」と言いカウンターへ向かった😢💦
(20qrでも800円なり)

運命のスペイン戦
三苫の1mm(出典:sports illustrated NUMBER)スペイン戦勝利! 一緒に喜ぶカタール人カップル

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Impressive things Ⅰ

スタジアム8ヶ所を地下鉄が結ぶ、駅から離れている所はシャトルバスで繋がる。

Doha Guide Map(Click!)

日仏のコンソーシアムで建設されている地下鉄は自動運転で運行している。ホームは天井まで鏡張りの壁と扉で覆われ、電車が入ると扉が開くのだが、鏡が開いて電車の中へ入る感じは、近未来映画を彷彿させる。電車の中もガラスや鏡が多く、光り物好きな国民性が分かる。
因みに地下鉄インフラはフランスと日本の技術で作られているらしい。車両は日本製との事。完全自動運転なので先頭車両は運転席が無いので観覧席状態。
駅は地上部分は小さいが、入ると冷房が効いている階下のホールは広く、駅ナカショップが数件あり、そこからホームまでは結構深い😢💦
この時期はこのホール部分が試合がある国のサポーターで埋まり、大騒ぎしながらスタジアムへ向かう。


地下鉄駅ホーム
駅ナカの床屋さん
スタジアムに向かうサポーター

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中東 / 食の研究

中東の食文化と言えば羊、スパイス、ナッツが私に残っているイメージ。カタール、ドーハの街には近代的ショッピングモールが多くあり、スーパーの品数の多さは日本と変わらない。

街角で食べられているフードは簡単だが美味い。
「shawarma」(シャワルマ)は、日本でケバブと呼ばれる肉の重ね焼きを削ぎ落とし、色々なピクルスをトッピングし、ピタパンの様な薄いパンで巻いてラッピングする。宿の近くにあるとてもローカルな食堂に通って覚えた。私は小麦を避けているので、ピタパンをガレットにしたら良いなとレシピ考えた。
この1本が11.Qr (1リアル約40円として440円、ローカルフードは安くて美味い)中身は鶏肉ケバブに玉ねぎ、ピーマン、辛くない唐辛子ピクルスなど、サイドディッシュにコールスローとポテトフライを付けて25.Qr (約1,000円)1度に食べきれないから半分テイクアウトする。

アパートの近くの気に入ったアラブ食堂には裏メニューがあって、出来れば羊が食べたいと言ったら、ビーフメニューを羊に変えられると店長が教えてくれたのがこれ!
ターメリックライスの上にガッツリ乗っている羊の骨付き肉🍖
この時7人でこれを3皿注文しサイドディッシュも数皿頼んで、皆で割ったら日本円換算1人800円だった。ローカルフードは安くて美味い

スーパーのスパイスコーナー
シャワルマ
アラブ食堂の裏メニュー

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「賄い飯を作る」移動のない大会だから出来る事、最初で最後?

(次回はカナダ米国メキシコのアメリカ大陸開催)
11月22日にカタール入りしてから毎日、被災地生徒のプレゼン行脚に同行し、帰りがてら現地食材を調査、そして同室の方々へ(実験)調理、私にとってはこの上ない喜びになった(同室の皆さんご協力有り難う)。
アパートの604号室で出会った方々は私のサッカー人生の中でも飛び抜けている人々。年間100試合をスタジアムに出掛けて観戦する方、1泊3日でカタールに来てトンボ帰りする方、予選から決勝トーナメント迄滞在する方、予選リーグで一旦帰ったものの決勝トーナメントに進出だからと再度カタールに来る方、Rm604に集った方々と友人の仲間に入れてもらった。

丸鶏1羽、約800円
チーズポテトとピーマン肉詰め
生徒たちとの食事会
アパート604室メンバー

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Impressive things Ⅱ

中東の王族の伝統的な事として鷹狩りがある。
カタールのTVではほぼ24時間W-Cupの番組を流していて、多くのプロモーションビデオが流れている。
Eagle eyes になってスタジアムを巡るこのプロモーションVRは、毎日毎回テレビに流れる。今回の色々VRは飽きない、音楽も良い。デザイナーさんへ乾杯🍷
ラクダ映像も楽しい。

Stadium974

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「海水浴ビーチがあるなんて、まるでお台場の様」

Stadium 974 は、海に非常に近い。またコンテナを積み上げ、大会終了後に解体も容易だとして、ザッハ·ハディド設計のAl Janoub Stadiumと共に人気である。Stadium 974 を観たくて試合の無い日に行った。ところが、試合が無いとフェンスから中には入れない。何回か巡回警備員が回って来る度に交渉するが、警備上決っているの一点張り😢💦
地下鉄を降りた時にボランティアさんが、地下鉄駅付近で叫ぶセリフが「Stadium this way🎵」というセリフを「Beach this way🎵」と繰り返していたから、帰りにbeachに寄った。
チャドル(中東各国で呼び名が異なる)着た婦人も海に入らずともビーチに居る。子供達や欧米人が海に入っていた、砂浜は白くて綺麗。
私は砂まみれが嫌で手前遊歩道で満足した😢💦
Hayya card が有ればなんでも無料で嬉しい🎵😍


Beach this way♪
Hayya card

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「欠かせない美術館巡り」

毎大会、サッカー応援半分、その国のカルチャー半分、このカルチャーに触れたく行くと言っても過言ではない。
最近は、IDカード(Hayya card)を事前に必ず申請し、首からぶら下げると公共交通や公共施設が無料になる。これで文化的な探索場所も安心して巡ることが出来る。

今大会ではスタジアム8ヵ所が地下鉄で繋がる良さ、イスラム教の美術館巡りは私にとっては大きな関心事であった。
11月22日午前中にカタール大学生への被災地報告の後、午後、National Museumにカタール大学生と皆で行った。
そして25日、サウジへのショートトリップの後で、今回の旅で最大の関心事であるMuseum of Islamic Art へ行った。(いずれも20時迄開館)

昔イランで知ったイスラム美術。その仕事の細やかさ、具象は禁止のイスラム教での幾何学的模様、ペルシャンブル-と言われるガラス細工など、ひとつひとつの細工が素晴らしい。昔、三鷹市と小金井市の間にある中近東文化センター(出光)には随分通った(ICUの近く)。こちらに無くてあっちにあるのは、朱鷺の剥製かな?

まずはNational Museum(設計Jean Nouvel 2007)。
デザインの核はそのまんま「砂漠の薔薇」、徹底的にこれを踏襲している。展示物はちょっと物足りない。

一方、Museum of Islamic Art (設計, I m.ペイ2008)
外観は私的には今一だが、中身は最高!

2建築を巡ると良い(2つが近い場所にある)。
建築はNationl Museum 、展示物は Museum of Islamic Art。

National Museum
Museum of Islamic Art
Islamic Art の壺

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「Good supporters」

試合前後に沢山のsupporterからエールを頂く。折角カタールでのW-Cupなので、地元カタールの試合を見てみたかった。
偶々、ちょんまげ隊で11月29日のカタール対オランダ戦のチケットを回してもらい観戦できた。ドーハの北に位置するAl Bayt Stadiumは屋根、壁がテント構造で室内側の裏地と言える仕上げが織物ぽくて魅力的である。
カタールの応援団がゴール裏に陣取って全員黒装束で顔も見えない。黒い塊でワーワー応援するのは迫力満点、面白かった。

この時のサポーターや他の試合でも一緒に撮って欲しいと、印象的だったボランティアサポーター!
カタールで語ろう~から、カタールで勝ったるで~‼️‼️
ドーハの悲劇からドーハの歓喜へ!     

Al Bayt Stadium
スタジアムのカタール女性たち
スタジアムボランティアさん達

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2026 W-Cupへ

次のW-Cup 2026は、アメリカ大陸大会でカナダ、USA、メキシコの共同開催。カタール大会は半年遅くなったから、次回はもう3年後である。
本戦出場は、今の32か国から48か国に増加するから、ほぼW-Cupに出場出来ると思う。
私はもう移動が辛いので、メキシコオンリーで参加予定。
食文化はトウモロコシで、小麦を取らない私にとっては最高だし、古代文明のマヤ文明やアステカ文明の遺跡を見て来たいと思っている。

(文・写真 山田朗 73期)




これまで会報に掲載された観戦記がまとめて読めます(^^♪

2006年ワールドカップ(ドイツ)⇒29号 P10~12

2014年ワールドカップ(ブラジル)⇒37号 P18~19

2018年ワールドカップ(ロシア)⇒41号 P16~17

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(WEB版編集/渡邊由美子 81期)

Dohaの夜景

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